日本は農薬使用量が多いのか?

1年ほど前に、FAO(国際連合食糧農業機関)のデータをもとに各国の農薬の使用量を、農薬と言っても、除草剤、殺虫剤、殺菌剤などいろいろあるので、内訳も含めてまとめてました。
一覧表は耕地面積100万ha以上に絞ってます(イスラエル以外)。

30年前の使用量との増減も確認してみました。
こちらも比較的大きな国に絞ってます。順位は1ha平均使用量が多い順です。

農薬使用量の単純比較に意味はない

農薬使用量に関して、気候、主要作物やその栽培法、はては経済状況にも影響され、除草剤、殺虫剤、殺菌剤などの内訳もぜんぜん違うので、単純に農薬使用量を比較して、日本が多いとか少ないとか話題にしても意味がないと思う。

消費者にとっては、農薬という大きなくくりでしか興味がなく(理解できず)、除草剤、殺虫剤、殺菌剤などの内訳までは関係ないと思っているかもしれないが、使用法や作用が全然違うものだし、危険性もかなり異なる。(昔ある人には、昔に比べると危険性が低くなったが、同時に効果が弱くなったのか、散布回数が増えたようなことを聞いた。どっちが良いのかはわからない。)

実際のところ、30年前に比べると日本の農薬使用量は減っているし、環境にうるさそうなドイツが実際には増えていたりする。

最近、有機農業の普及推進が話題にあがることが多いけど、データを用い、ファクトに基づきながら、建設的な議論をすべきだと思う。

データを読み解いてみる

アジア先進国は比較的に農薬使用量が多い。高湿度であること、施設園芸もあり、年中野菜を作っているのが理由だと思われる。

湿度が低く冷涼なヨーロッパでも、施設園芸の盛んなオランダの順位は高い(イスラエル含めて考えると、施設園芸は農薬に頼るところが意外と大きいようだ)。オランダ式やイスラエル式の農業が持ち上げられていることもあるが、果たして環境負荷やSDGsの観点からはどう評価できるのか、不明だ。

フランス、ドイツ、アメリカが少ないのは、栽培期間が短く、そもそも農薬使用量が比較的少ない穀物比率が高いのが理由。

一方で、南米の国は穀物比率が高くても、二毛作ができるので使用量は多い。30年前に比べて増えてるのも二毛作が普及してきているから使用量も増えているものだと思われる。北も南もアメリカ大陸は、除草剤の割合が高いところが多い。

途上国は農薬を買う金がなかったり、農薬を使うことによる付加価値向上があまりないので(見た目よりも食べられるかどうか)、そもそも使わないのだと思われる。経済成長し、生活が豊かになれば農薬使用量は増えるかもしれない。