昨日は三会堂ビル・石垣記念ホールで開催された平成27年度日本いも類研究会総会・いも類講演会に参加してきました。
講演会の内容は以下の通りでした。
- 食品中のアクリルアミドをめぐる状況
- じゃがいも新品種「ながさき黄金」の育成と特性
- 食用サツマイモ育種研究の最新動向
- さつまいも生産から焼き芋など加工品まで体験できるなめがたファーマーズヴィレッジの紹介
食用サツマイモ育種研究の講演が面白かったです。
糖化反応開始温度が低い品種ほど、最終的な糖度が高いこと。糖化反応開始温度には劣性遺伝子が関与していること。栽培時の地温による影響が大きいことなど、研究機関ならでは検証がユニークです。
講演会終了後は、ホール隣のロビーにて情報交換会(懇親会)が開催されました。
さつまいも育種の話を聞いたり、世界ほしいも大会でインドネシア産の干し芋を出展されていたみつい食品の方にインドネシアでのさつまいも事業の話が聞いたりと、面白い話がいろいろ聞けました。
トピックとして何点か書いておきます。
地方品種との遺伝的違いは少ない
鳴門金時、五郎島金時、宮崎紅、紅さつま、大栄愛娘、土佐紅などは地方品種ですが、すべて高系14号という品種から選抜され派生しています。
これらの地方品種と元になった高系14号を、遺伝的に比較してもほとんど差はないという話でした。
その地方の土壌や気候にあったさつまいもが選抜されており、遺伝的に優れているわけではないので、他の土地で作っても美味しくないことが多いのではないかということでした。
ホクホク系のさつまいもが不足している
紅はるかは味や見た目も優れているだけではなく、栽培面でも土地をあまり選ばない、作りやすく収量も多いので、日本の各地で栽培されるようになりました。
ただ、新しい農地を開墾して作付すればよいのですが、これまで紅あずま等のホクホク系のさつまいもを作付していた畑を紅はるかに変えているので、全体として紅あずま等のホクホク系のさつまいも供給が非常に不足しており、油で揚げるお菓子(大学芋、芋ケンピ、チップス)を作っている企業や店が非常に困っているらしいです。
紅あずまは日本以外でも作れる
紅あずまの種苗登録の有効期限がきれているので、海外に持ち出ししやすいため、東南アジアで日本のさつまいもを作っているところは、紅あずまを持ち込んでいるところが多いそうです。
平均年齢70歳を超えるのではないかと思ういも類業界の重鎮方に囲まれ、若手として期待していただいていることもあり、身が引き締まる思いです。
アカデミックな方、ビジネスサイドの方と、さつまいもに関わっている両方の立場の話が一緒に聞けるのは楽しいのですが、一方で様々なさつまいもの研究が実施されていて、実際に論文として発表されている内容はあるのですが、それが栽培に活かされているわけではないところが問題だなと思いました。
育種研究者からビジネスマンに目標を変えた身としては、起業アイデアとして、アカデミックとビジネスの繋げ役(産学連携)のコンサルティングができないかと思っていたこともあり、改めて弊社はこの辺に取り組んでみたいと思いました。