最近、焼きいもの糖度についてテレビ局から問合せがあり、思うところがあったのでまとめたいと思います。
テレビ局から問合せは、高糖度の焼きいもをうたっているところがあり、その紹介時に通常の焼きいもに比べて○○倍とアピールしたいという話でした。
さて、糖度について基礎的な話は、過去に協会のコラムにまとめていますので、事前にこちらも読んでもらえると理解しやすいと思います。
https://sweetpotatoes.jp/sweetpotato_brix/
先日、スーパーで購入した「あまはづき」の生イモ搾汁の糖度(Brix値)を測ってみたところ11%でした。収穫後にどれぐらい経過しているかはわかりませんが、「あまはづき」なので、そこまで貯蔵せずに出荷しているものと思います。
食品成分表によれば生イモ100gに含まれる糖は4g程度です。なので、4%ぐらいを示すのかなと思いましたが、実際には搾りかすなどの廃棄分やその他水溶性成分がありますので、糖度計の値としては10%程度になっていると思われます。
さて、糖のもとになるデンプンは生イモ100g中に約25~30g含まれます。加熱調理によりすべて糖に分解されたと仮定すると、糖度は25%~30%ぐらい増えるはずです。(実際は分解して生成される糖は9割程度になったと思います)
なので、もともとあった糖などに分解されて生成した糖がプラスされると40%ぐらいが限界だと思いますが、焼きいもにすると水分が2割以上は減少するので、そうすると50%ぐらいには簡単になります。
ちなみにデンプンは糖に分解されなくても糊化状態になると、糖度計による測定対象となるため(上記記事参照)、あまはづきや貯蔵したべにはるかのように糊化しやすい品種(ねっとり系)は、高糖度を示しやすいです。
以上、糖度は同一条件で品種・産地・加工を相対的に比較をしたり、加工タイミングの判断指標として使えますが、必ずしも絶対的な数字ではないことに注意が必要です。
そもそも、十分に乾燥させているはずのべにはるかの干しいもで水分量が25%、糖度70度ぐらいですから、焼きいもで糖度70度は理論的に難しいです。焼き干しいもにしているならあり得るかもしれません。ちなみに、はちみつが80度、冷やしアメが65度です。
果汁が多く加熱しない果物では糖度は重要な指標で、店頭などでアピールしても良いと思います。しかし、基本的には同一作物内であって、糖以外の水溶性成分の割合が異なってきますので、他の作物と比較するのは意味がないと思います。
焼きいものように加熱したもので、糖以外の水溶性成分が多く含まれるものについては、消費者にアピールする値としては信用できず、糖度をアピールするのは消費者に対して不誠実だと私は考えています。
なので、冒頭のテレビ番組には「信頼性を失いますよ」と回答しておきました。
以前に比べると、糖度をうたっている商品は少なくなったと思っていたのですが…糖度以外にアピールするのが難しい(少ない)ってのもあり、仕方ないと思うところはあります。
上記のことを理解した(説明できる)上で使ってほしいですね。